研究概要 |
イオン液体は常温付近で液体状態をとる塩であり,高いイオン伝導性や様々な物質を溶かす優れた溶解性など,通常の分子液体には見られない興味深い性質を持つ新しい物質群である。ただ、よくよくその分子構造を眺めてみると、今まで我々が両親媒性化合物と呼んでいたものに、その差異は微妙だが、他ならない事に気づく。「混和する、しない」、「構造を作る、作らない」などコロイド・界面化学で蓄積された様々な知見は、意外に我々がイオン液体について抱いている疑問を解く重要な鍵になるかもしれない。また、蒸気圧が観測限界以下という点から超高真空環境下での電子分光が可能であるため、「電子構造の解明」という側面から液体の物理化学を進展させることも可能かもしれない。 我々はイオン液体の表面/界面構造を微視的な観点から理解するために,赤外-可視和周波混合振動分光法(IV-SFG法)などの表面敏感な測定手法を用いた研究を行っている。本年度は1-butyl-3-methyl imidazolium tetrafluoroborate([BMIM]BF_4)-水混合系において,その表面張力測定からギブスの表面過剰量に異常を観測し,その濃度領域で特異な表面構造が形成されていることを見出した。注目すべき点はr^+の増加が認められたsspスペクトルc=0.02において,pppスペクトルでもr^-の著しい増加が認められることである。これはブチル鎖の直立化傾向だけでなく,この濃度において分子数密度も著しく増加していることを示唆するものである。これはc=0.02の表面張力がc=1.0(pristine [BMIM]BF_4)のそれよりも低いことを定性的に説明しており,この濃度領域においてイミダゾリウムカチオンが表面に選択的に凝集している、すなわちカチオンのGibbs膜が形成されていることに対応している。
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