イオン液体は、溶媒の無い電解質である。これを用いて色々な電気化学反応を行うことが可能であるが、その働きの詳細は不明である。イオン液体中でナノレベルの電気化学反応を行い、その挙動を水溶液中での反応と比較することにより、イオン液体の電解質としての役割を明確にして、新規のナノ構造体調製法を開発することが本研究の目的である。 1.イオン液体の電解質としての役割:金電極表面に吸着させた、アルカンチオールの自己集合単分子膜の還元脱離反応をイオン液体中で行った。得られた結果をディジタルシミュレーションによる理論的解釈を行うことで、イオン液体のカチオンはチオールの還元脱離で生じるチオレートの負電荷の対イオンとして働き、正電荷は溶媒として働くことを明らかとした。 2.電気化学反応のin situ顕微鏡観察:イオン液体は蒸発しないので、電子顕微鏡の真空チャンバ内で各種の電気化学反応を行うことができるそこで、真空チャンバ内に電気化学セルを入れ、電極に電圧を印加できるようにSEMの改造を行った。それにより、金属析出や導電性高分子のレドックス反応を電子顕微鏡観察できるようにした。その結果、導電性高分子の酸化還元反応により、イオン液体のカチオンが出入りすることを膜厚変化とEDX観察により明らかになり、アニオンは固定ドーパントとして働き、カチオンが電解質として働くことが解った。また、金属析出でデンドリマー形成や球状金属形成が見られたことから、アニオンが吸着しながら反応がしんこうすることを明らかとした。
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