研究概要 |
高エネルギー密度の蓄電テバイスとしてリチウム電池や電気二重層キャパシターが市販され、その電解質溶媒には有機溶媒が利用されているが、安全性や耐久性の観点から難燃性、難揮発性であるイオン液体を適用する試みが活発になってきている。 本研究ではかかる状況のもと、優れた基本特性(低粘性、高導電率、広電位窓)を有するイオン液体の設計指針、イオン液体に適合したデバイス構成材料の設計指針を明らかにし、最終的にはイオン液体のエネルギーデバイスへの応用可能性を広げる事を目的としている。 本年度はまず、物性とイオン構造の相関についての知見を増やすことを目的とし、これまでに報告例のない新規なイオン液体の合成を検討した。正イオンに脂肪族複素環カチオン、負イオンにパーフルオロアルキルトリフルオロボレート(R_FBF_3^-,RF=-nC_nF_<2n+1>,n=1-4)からなる組み合わせの多くは室温で液体の塩を形成した。それらについて粘性、導電性から、熱物性(DSC,TGA)測定、さらに電気化学安定性について総合的に検討した。比較として、これまで広く検討されてきたビストリフルオロメタンスルホンイミド(TFSI)、テトラフルオロボレート(BF_4^-)からなる塩を合わせて検討した。その結果、R_FBF_3^-と鎖状脂肪族カチオンからなる従来の結果と比較すると、R_FBF_3^-系においてもTFSI系と同じく環状カチオンからなる塩の方が粘性が低く、導電性が高いことが分かった。アニオン種に着目すると、粘性は単純にアニオンのサイズに依存せず、最適なサイズが存在することがわかった。さらに、電気化学安定性について検討したところ、脂肪族カチオンからなるR_FBF_3^-系イオン液体は、5V以上の広い電位窓を有するものが多く、リチウムやナトリウム等の卑な金属の電析が可能なほど還元側の電気化学安定性に優れている事が分かった。
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