日本の戦後の技術の相当多数はプロジェクトのなかから生まれてきた。プロジェクトという有期の臨時組織のなかで、異なる企業・組織に属する、異なる技能・技術を持った技術者たちが協調的に働き、複雑かつ変動する要求条件に対する技術的解答を生み出してきた。本研究は、このような経緯を踏まえ、20世紀に展開された国家的な大規模プロジェクトをケーススタディ対象にして、プロジェクトにおいて技術融合が生起していくメカニズムについて以下の点を明らかにすることを目的にする。 1. 大規模プロジェクトにおける技術融合プロセス 2. 技術融合を促進及び阻害する構造的要因 3. 大規模プロジェクトで創造された技術の水平展開・移転プロセス 20年度においては、国家的大規模プロジェクトにおける技術融合メカニズムに関して、「何故、長期にわたってインフオーマルな、しかし理念と目標を共有した技術者コミュニティを維持発展させることができたのか?」という点に着目し20世紀の日本の技術革新にかかわる事例分析を進めた。その結果、以下のような仮説を持つに至っている。 1. 技術者が所属企業だけではなく、技術者コミュニティに、今日と比べてはるかに深い帰属意識・同士意識をもっていた。そうでなければ、超高層建築などにおいて、企業の枠を超えて、技術的すりあわせに伴う情報知識の交換が円滑になされ設計・製造における技術的整合性の確保したことは説明しがたい。 2. 技術開発をした成果が、技術者個人のみならず、所属組織にも、社会にとっても意義深いことであり、発展性を持っているという見通しを少なくとも漠然とは当事者がもっていた。 3. 新しい形式の人工物を創造していくプロジェクトが多かったために、非定型的で、柔軟な対応をすることは日常茶飯事であった。そのために、継続的に存在するインフォ-マルな技術者コミュニティの重要性を多くの人が認識し尊重していた
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