昨年度に続き、海外調査を実施した。イギリス、フランスでは、市街地並びに歴史的建築物の防火対策とその技術革新に関する実態を調査した(11月)。台湾では、伝統産業の技術革新に関する実態を調査した(6月・3月)。アメリカでは、市街地並びに歴史的建築物の防火対策及びその技術革新に関する実態を調査した(1月)。アメリカ調査は、本年度から始めたが、これにより法的に重視すべき先進諸国すべての調査を実施した形となる。 昨年度までの研究成果を次の通り発表した。日本建築学会の大会(9月)では、イギリスの技術者に関する調査結果、並びに、イギリス・フランス・ドイツにおける既存建築物の安全対策に関する調査に基づく国際比較研究の成果を発表した。台湾で開催きれた国際シンポジウム(9月)では、市街地の安全対策に関する調査に基づく国際比較研究の成果を発表した。学会誌等においては、フランスの歴史的建築物の防火対策に関する調査の成果、台湾の伝統産業に関わる施設の調査の成果等について発表を行った。 本年度までの調査の結果、法令・基準の整備にともなう技術の展開が、革新ではなく失敗につながる事例ついて、一定の法則性を見出すことができた。また、欧米の諸国と比較して、事前の規制を重視する日本の法令や基準の在り方が、近年は技術革新の実現に悪影響を与えていたり、技術者の地位や倫理の低下を招いていたりすることを明らかにすることができた。この結果については、順次ホームページ上で公開することを予定している。
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