研究分担者 |
森 大志 山口大学, 農学部, 助教授 (50301726)
柳原 大 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90252725)
中陦 克己 近畿大学, 医学部, 講師 (60270485)
稲瀬 正彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80249961)
中里 泰三 順天堂大学, 医学部, 講師 (80155697)
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研究概要 |
我々の随意運動にはこれに随伴する姿勢制御が必要である.例えば様々な環境に適応して移動するためには,我々はその環境に適応した姿勢と体幹・上下肢(四肢)の統合的な動きを実現する必要がある.従って,姿勢制御は無意識のうちに随意運動に随伴する運動過程であるにも関らず,環境に適応するために計画された行動プログラムの初期の運動プロセスと考えられる. そこで本研究課題では,神経生理学的な研究手法を用いて適応的な歩行運動を実現する姿勢制御の神経学的メカニズムの解明を試みる.平成17年度(初年度)は,姿勢制御が大脳皮質内において運動プログラムとしてコードされているか否かについて検討した.研究には,二足歩行を学習したマカクザルを用い,歩行行動の開始や四足歩行から二足歩行への変換過程における姿勢の制御と大脳皮質運動関連皮質・下肢領域における神経細胞の発射活動との関係を解析した. 大脳皮質一次運動野(M1)の神経細胞は,歩行運動時に持続的に発射活動を示すものと歩行ステップに対応してリズミカルに発射するものとが存在した.補足運動野(SMA)においても同様の神経細胞群が存在した.また,M1,SMAの神経細胞群ともに,歩行速度の増加と共に発射頻度は増加した.一方,SMAには,歩行の開始や四足から二足歩行への変換に先行して発射活動を増加させる神経細胞群が存在した. SMAは,M1に比べて脳幹への神経線維の投射が豊富であることを考慮すると,本研究の成績は,(1)SMAにおいて既に行動開始や歩行戦略の変更に伴うプログラムが生成され,(2)M1と共に,(基本的姿勢制御機構の存在する)脳幹にもそのプログラムの情報が送られ,随意運動に先行する姿勢制御が実現されると想定される.また,この成果は,姿勢制御が行動戦略の初期プロセスとして必須であるという我々の作業仮説を裏付けると共に,大脳皮質が歩行障害や姿勢障害に対する治療ターゲットである可能性を示唆する.
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