研究分担者 |
森 大志 山口大学, 農学部, 准教授 (50301726)
柳原 大 東京大学, 大学院, 准教授 (90252725)
中陦 克己 近畿大学, 医学部, 講師 (60270485)
吉見 腱二 順天堂大学, 医学部, 助教 (40450316)
奥村 利勝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60281903)
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研究概要 |
本研究の目的は,「動物の持つ環境への適応的な運動機能の解明と理解」である.姿勢制御は全ての運動に先行する.動物を取り巻く環境は絶えず変化するため.運動に先行する姿勢制御は"予測的"である.加えて,適応的な運動の遂行には,感覚情報の変化に基づく"リアルタイムの姿勢制御"が要求される.従って「適応的な運動のメカニズムを理解し,これを構築する」ためには,(1)予測的な姿勢制御と,(2)リアルタイムの姿勢制御の仕組みを解明する必要がある. そこで本研究では,サル,ネコ,ラットを実験動物として用い,電気生理学手法,神経薬理学的手法,分子遺伝学的手法を駆使した脳生理学研究を展開し,歩行と姿勢の統合的神経機構の解析を試みた.姿勢と歩行に関与する基本的神経機構は脳幹と脊髄とに存在する.そして,大脳皮質,大脳辺縁系,大脳基底核,小脳などの神経機構は,脳幹-脊髄の神経機構の活動を修飾することにより起立と歩行に関与していることが明らかとなった.特に,"大脳皮質-網様体脊髄路,ならびに大脳皮質-小脳間の神経回路が予測的姿勢制御"に,そして,"大脳-小脳-脊髄連関,ならびに,脊髄反射の利得調節に寄与する筋緊張制御系がリアルタイムの姿勢制御"に,各々,関与することを証明することができた.特に,大脳基底核は,大脳皮質と脳幹に作用することにより,双方の姿勢制御プロセスに関与すると考えられる.ドーパミンやオレキシンなどの神経修飾物質はこれらの神経機構の恒常的な興奮性維持に寄与する. 本研究成績は,中枢神経系の障害に基づく適応機能障害の病態メカニズムの理解に重要な知見を与えると共に,適応的運動機能の構成論的理解や人工物における適応機能の構築を推進する上で極めて有用な知見を提供すると考えられる.
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