研究概要 |
生命システムの認知機能や運動機能は環境との調和的関係を作り出すための機能である。これまでの運動制御は、環境とシステムを分離し、環境を限定したときに求められた継時的秩序の法則を用いているが、これは無限定環境下でのリアルタイムな制御には適しない。われわれは予測不可能的に変化する実環境に柔軟に適応する「共時的な秩序を生成する法則」を明らかにすることで、「大脳皮質運動関連領野が創る「見なし情報」による随意運動制御」の研究を行った。無限定な環境にある生命システムが環境と調和的な関係を創らなければならないが、どのような調和的関係を作るのかということが拘束条件である。この拘束条件は調和的な関係を「仮設」することに相当するので「見なし情報」であり、この「見なし情報」無しには生命システムは機能しない。 モデルシミュレーションにより,感覚器官からリアルタイムに得られる身体の運動学的・動力学的情報に基づいて各関節の動き易さを評価し,各関節への制御情報を自律分散的機構により生成することで,予測不可能な環境変化に対しても柔軟に適応する腕到達運動が実現されることを明らかにした。環境との相互作用により制御に必要な拘束条件を生成・充足するこの手法は,実世界で機能するシステムに「自己言及的評価機構」と「自律分散的ネットワーク構造」が必要不可欠であることを意味する。制御メカニズムの環境適応性を実機により検討するため,冗長アクチュエータとリッチセンサーを特徴とする2関節6筋アームロボットの設計・開発し,モデルが有効に機能することを確認した。また,拘束条件生成・充足による運動制御の生物学的機構を解明するために,様々な擾乱下で腕到達運動計測を可能とするマニピュランダムを設計・開発し,統制条件下での到達運動を測定した.
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