研究概要 |
環境に合わせて目的を達成する行動は随意運動である。目的を設定すると、これを解く問題は逆問題であり、逆問題は一般に不良設定問題になる。この不良設定性を解消するためには拘束条件が必要である。無限定環境下でリアルタイムに目的を達成するには、拘束条件を環境とシステムの状態に依存して時々刻々生成し、それをリアルタイムで充足しなければならない。随意運動において、目的を達成するための拘束条件を「見なし情報」と呼ぶことにする。 「見なし情報」は, 運動遂行における最上位の拘束条件であり, そのもとで, 下位の複数レベルの拘束条件がリアルタイムに生成・充足されなければならない. 本年度は, 腕到達運動制御に関し以下の研究を行った. (1)動き易さ優先化に基づく腕到達運動の自律分散的制御モデルの数理的解析を行った. 制御モデルには相反する2つの制御モード(バネ的で粗い/精密で直線的)が含まれていること, これらのモードが各関節の動き易さの評価に応じてリアルタイムに切り替わることを明らかにした. この結果は自律分散的な制御モデルが, 腕運動における不良設定の変換問題を解く変換行列をセンサ情報から自律的に作り出しているということを示している. (2)腕到達運動解析装置であるマニピュランダムの設計・開発を行った. 開発したマニピュランダムは, アナログ技術により位置制御とトルク制御を機構的に分離独立させたものであり, 通常動作時はほぼ無負荷で手先位置の検出が可能で, 手先への荷重負荷も高精度で行うことができる. 本年度は, 目標到達運動において, 試行ごとに異なる回転座標変換を視覚的手先位置に加えることで, 予測不可能的に変化する環境に対する運動の適応過程を検討した.
|