研究概要 |
オスクロコオロギの喧嘩行動を題材として,相互作用するクロコオロギ集団の様々な階層におけるモデル化および解析を行った.これより,生物の社会的適応行動の基盤を明らかにすることを目指している.ここでは,システム工学的なアプローチを用いることにより,コオロギ群の相互作用を,神経構造レベルから行動レベル,社会性レベルまで一貫して議論し,それらのメカニズムの解明を図った.まず,二種類の内部変数を有し,(i)彷徨(Wandering),(ii)静止(Stopping),(iii)喧嘩行動(Fighting),(iv)障害物回避(Obstacle avoidance)の4種類の基本行動から構成される有限オートマトンモデルに基づくクロコオロギ単体と集団的挙動との関係を表す行動モデル化を行った.次にクロコオロギの神経生理モデルに基づいた群挙動の検証を行った.その結果を踏まえて他コオロギとの接触と内部状態に基づきコオロギの感度を変化させるモデル拡張に取り組んだ.接触頻度が高いと,内部状態にかかわらず喧嘩行動に移らないという現象を再現できる可能性を見いだした.また,温度,餌質等の生育環境パラメータの影響に基づいたコオロギの成長に関するモデル化を目指し,代謝速度,温度,資源の特性などの生態学的概念に基づくコオロギ個体の体重に関する成長モデルの基礎を構築した. このことより,クロコオロギの生態に関する時空間的なモデル構成が可能となった.今後はこれら断片的なモデルをどう統合するかが課題である.
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