本年度は、非線形振動子を構成要素とするネットワークに関して、その構造と収束性について一定の条件化において明らかにした。 非線形振動子は、外乱の存在下でも自身の持つ固有振動数で安定して振動を続けること、他の振動子との引き込み作用を用いることで、お互いの位相を一致させ調和的な振動系を構成できること、に大きな特徴がある。この引き込み作用を行う振動子間の関係をネットワークで表現すると、このネットワーク構造によって収束状態が左右される。本研究では、ネットワーク構造および固有振動数に代表される個々の振動子が持つパラメタに対する、振動子系全体の収束状況について、一定の条件下で明らかにした。 具体的には、非線形振動子として比較的安定しており性質が解明されているvan der Pol振動子(以下VDP振動子)を用いる。微分方程式で表現されたVDP振動子の相互引き込みネットワークについて、定性的な知見として(1)単純なリング状の振動子ネットワークについて、奇数個の振動子がネットワーク構成要素となるようなショートカット追加によって、安定な収束状態を不安定化できること、定量的な解析として(2)固有振動数の差異による、引き込みに対する収束安定化・不安定化分岐点の定式化、を得た。さらに(3)ネットワーク構造の変化が、一部の引き込みに係るゲインを低減させる効果をもたらすこと、を明らかにした。これらの成果を融合することで、(4)一定の条件における振動子ネットワークにおいて、ショートカット追加という構造操作により、振動子系の収束安定性を操作できることを照明した。
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