研究概要 |
本研究では,生物の持つ環境適応能力のうち、状況・経歴依存の行動選択課程について研究する。生物では、脳内神経回路などにおいて適応的行動を支える機能的なネットワーク構造の存在が予想されている。本計画研究ではコオロギやカイコ等の昆虫のフェロモン行動における神経生理学的知見と行動学的知見、およびアリなどの空間展開型社会性の知見を踏まえて、異なるレベルの相互作用ネットワークを抽象モデル化し、その共通原理および多様性発現メカニズムを明らかにすることを目指す.これより,コオロギ・カイコ等の昆虫の非限定的状況に対する適応的行動発現メカニズムを物理的・空間的構造から統一的に理解することを目標とする。平成19年度においては、多数の非線形振動子による相互引き込みネットワークの構造と収束状態解析に基づき、生体の体内回路網(主として感覚器〜神経回路〜行動出力)における多形成・状況依存性についてモデル化を行った。特に、生物の電気生理的実験と工学モデルとの対比に基づく数理的知見の統合と、生物の行動発現に対する理解について研究を進めた。対象として、微小脳を持つコオロギ・カイコガを取り上げ、神経素子集団のネットワーク的構造と機能の連関の解明、および外界からの作用力に対する適応的パターン生成能力、について研究を行った。成果として,触角葉における信号処理とこれに伴う行動切替を非線形振動子によるアナログ電子回路モデルで再構成の上,コオロギが発揮する個体密度に応じた活動レベル分化メカニズムの構築を実現した.また,カイコガの脳指令によって直接駆動する,脳-機械融合システムを構築し,身体・環境変動に対する適応能発現の行動学的解析および神経活動解析を可能とした。
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