研究概要 |
無限定環境に適応することを行動仕様として与えられた移動主体は, それが生物であっても非生物であっても, すなわち「種」が異なっても, 環境の複雑さに対処する必要がある. その能力を移動知と呼んでおく. これまで我々は, 移動知の共通原理に関連する重要なキーワードとして, 「階層構造」委譲性(受動と能動の二重構造化), 最下位層の身体性と最上位層の非構造性「多重フィードバック構造」個の中の多重性と個間の多重性, 「制御原理」拘束化問題(物理法則, コヒーレンシー), 多重最適化問題(最適集合), 予測問題(みなし情報), などを提示してきた. 今年度は, 移動知問題をより根源的に考えるとまず制御則と制御対象の関係を明確化する必要があることがわかってきた. そして制御則を考える際の根底には制御対象と制御則と環境が不可分であるという「不可分問題」と閉ループ系においてその内部特性を同定しようとする「閉ループ問題」が存在しており, それを明確に定式化し解かなくてはならないことが見えてきた. より具体的には, 制御対象と環境との間に陰的フィードバックが構成され, そして陰的制御則が構築される図式が描けることがわかってきた. われわれはこの問題を「埋め込み問題」として定式化し, このような問題における制御系の考え方について, 事例をもって探求した. 具体的な事例として, 受動的ロコモーションと重力場におけるマニピュレータがその例であることを示した.
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