研究概要 |
本研究では,新規ナノバイオ環境システム技術を確立するために,ナノマニピュレーションに基づいた局所環境計測・制御用バイオナノツールの創製し,これまで不可能であった局所的な環境情報の計測・制御技術,さらには低侵襲な細胞計測技術を確立することを目的としている. 昨年度に引き続き,環境制御型電子顕微鏡における高精度・高作業性を有した多自由度多プローブナノマニピュレーションシステムを用いた各種バイオナノツールの創製・単一細胞計測実験環境を整備している.本年度は,バイオナノツールとして,集束イオンビーム加工に基づいたタングステンナノプローブ型温度センサを作製し,パリレン絶縁層をコーティングすることにより,液中環境での温度計測を行った.恒温槽による空気中での温度計測と共に,環境制御型電子顕微鏡用ナノマニピュレータにより操作し,加熱・冷却ステージにより一定温度に保った溶液中での温度計測に成功した.また,抵抗加熱を利用したナノヒーター周辺での局所的な温度分布を,ナノマニピュレータにより走査させることで,ナノヒーター周辺の局所的な温度分布の計測に成功した.以上により,ナノプローブ型センサの液中環境下を含めた局所温度計測の可能性について基礎的な特性を評価した.また,新規バイオナノツールとして,強度が高いマイクロピペットにナノメートルサイズの噴出口を有したピペットとして,有機ナノチューブ(Organic Nanotube: ONT)を用いた有機ナノチューブナノピペット(ONT Nanopipette)を作製した.マニピュレータにより単一のONTをピックアップし,マイクロピペット先端に紫外線硬化性樹脂により固定した.さらに電気泳動・電気浸透現象を利用することで,印加電圧に応じて蛍光溶液を噴出させることに成功した.以上により,ナノピペットを用いた単一細胞の局所領域の溶液噴出制御の有効性について示した. (796字)
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