研究概要 |
バクテリアべん毛モーターは直径が高々40nmの回転モーターであり,その原動力は,細胞内外のイオン濃度差であり,種により,プロトン,ナトリウムが用いられる.我々はこれら2種類を融合したキメラ菌体を作成した.このキメラ菌体は,回転計測に適しており,回転機構の解明に重要な役割を果たす.しかしながら,まだこのキメラ菌体の基本的な性質については,まだ確認していない.そこで,我々はこのキメラ菌体の基本的な性質を明らかにすることを試みた.その結果,キメラ菌体のトルク-速度関係は元となる二つのモーターと同様の回転-トルク特性を持つことがわかった.さらに,固定子の発現量を調整することにより,固定子のモーターへの組み込みとともに回転速度が段階的に上昇することを観察できた.さらに,1個の固定子による回転-トルク特性を明らかにすることができた.その結果,キメラ菌体は元となる菌体,ナトリウム型,プロトン型,のちょうど中間に位置するモーターであった.具体的には,最大トルクはプロトン型,最大速度はナトリウム型であり,低回転域においては一定のトルク,ある速度域からは回転速度の上昇とともにトルクは直線的に減少した.この特性は,プロトン,ナトリウム型共通の性質であり,三者とも共通のメカニズムで機能していることを示唆するものである.さらに,一つのモーター一には膜に固定された固定子が10個程度組み込まれ,回転子と相互作用して回転運動を引き起こすことが知られているが,一つの固定子の性質を調べるために,固定子の発現量を調整し,その特性を検討した.さらに,遺伝子変異体を導入し,その特定変化を検討した.
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