研究課題
我々が開発を行っている超好熱始原菌T.kodakaraensisの無細胞翻訳系において、既に耐熱性キチナーゼ(ChiAΔ4)をコードするmRNAを用いたin vitro翻訳が可能となっている。本年度はこの系を利用して、タンパク生産量の最適化を進めた。まず無細胞抽出液(S30画分)の作成方法について改良を行った結果、菌体破砕に使用するフレンチプレスの条件を穏やかにし、またプレインキュベーション過程を廃止することにより、タンパク合成活性が約4倍増加したS30画分を作製することに成功した。続いて反応溶液中の各添加物(S30画分、Mg^<2+>、K^+、NH^<4+>、phosphoenolpyruvate、 PEG8000、amino acid mixture)の濃度の最適値を個々に検討した。その結果、それぞれの成分の最適濃度は16μg/mL、3mM、250mM、75mM、10mM、2%、3mM(each)であった。他の系と比べた本系の特徴はカリウム濃度が高いことであるが、これは超好熱菌の細胞内カリウム濃度が高いことを反映していると思われる。これらの成分濃度の最適化により、トータルとしてタンパク合成量がさらに20倍増加した。さらに翻訳反応を長時間行うとS30画分が熱失活している様子が観察されたことから、熱ショックタンパクの転写抑制因子の遺伝子破壊株を用いてS30画分の調製を試みた。その結果、タンパク合成量が約13%増加した。これらの全条件を組合せた系で実験を行った結果、タンパク合成量は反応開始後15分で100μg/mLを突破し、合成量の最大値は115.4μg/mLに達した。
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