本年度はこれまで開発してきたThermococcus kodakaraensisのin vitro翻訳系を用いて、オペロン構造を有する複数遺伝子の翻訳を試みた。対象オペロンにはT.kodakaraensisのアントラニル酸合成酵素をコードするtrpEGオペロンを選択した。TrpEとTrpGは会合体を形成し、これによりグルタミンをアンモニア供与体とするコリスミ酸からのアントラニル酸合成が進行する(AS複合体活性)。trpEGオペロンに相当するmRNAを調製しtrpEG欠損株由来のS30画分を用いて、in vitro翻訳反応を行った。その結果、反応溶液内にTrpE活性が観察され、またウエスタンブロット解析によりTrpGタンパクの合成が確認できた。さらに、溶液内にAS複合体活性が検出されたことから、無細胞合成されたTrpEはTrpGと複合体を形成していることが判明した。この結果により、本系によりヘテロ複合体を形成するタンパク質など、より広範囲なタンパク質合成が可能であることが示された。 さらに、リボソーム内空間を反応場として用いた無細胞タンパク質合成を試みた。T.kodakaraensis由来in intro翻訳系を内包するリボソームを界面通過法により作製し、その内部でのGFPの合成を試みた。 合成反応終了後のリボソームを共焦点レーザー顕微鏡下で観察したところ、GFP由来と考えられる蛍光が観察されたことから、実際にリボソーム内でタンパク質合成反応が進行することが示された。本結果は、将来的な機能性リボソームの構築に向けた基盤となる結果と言える。
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