細胞機能の模倣を行うため膜タンパク質の再構成を目標とした。そこで我々は、膜移行性が知られているバクテリオファージのコートペプチドをシーズペプチドとして、細胞膜モデルとしてリボソームを利用して、方向性を持って自発的に膜に移行・挿入されるペプチドの合成を試みた。この結果、膜貫通領域にロイシンによる疎水性の付与を行うと同時に、ペプチド両末端にアミノ酸変異を加え荷電をコントロールすることで特定の方向性を持ってリボソームに移行できるペプチドの調整を行っている。この中でペプチド内のアミノ酸変異による疎水性変化により、ペプチドに対する抗体との反応性が大きく異なることを見出した。この疎水性に基づく抗体との反応性の変化は、ニトロセルロース膜やPVDF膜など通常の生物学の分野で頻用されるウエスタンブロット法で抗原の固定を行い抗原抗体反応の反応場として利用される膜上でも確認された。これはこれら膜上でペプチドがフォールディング構造を形成することで抗体との反応性が大きく変化するものと示唆された。
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