研究分担者 |
今西 二郎 京都府立医科大学, 医学研究科, 教授 (40112510)
伏木 信次 京都府立医科大学, 医学研究科, 教授 (80150572)
中屋 隆明 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教授 (80271633)
岸田 綱郎 京都府立医科大学, 医学研究科, 博士研究員 (00370205)
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研究概要 |
本研究課題では、EBV人工染色体の細胞内での移送,保持,分配のメカニズムを微小レベルで解明するとともに,細胞内での遺伝情報の送達,発現,維持の効率がさらに飛躍的に向上した次世代の遺伝子送達技術を開発し、システム細胞工学に資することを目的とする。平成17年度は、EBV人工染色体の各エレメントを別個に有する種々のベクターを構築し、それらを様々な細胞に共導入することにより、種々のエレメントの機能を計測するとともに、遺伝子導入における制約条件を見出す研究を行った。導入には電気穿孔法、カチオニックポリマー等を用い、解析はフローサイトメトリー等にて行なった。その結果、EBV人工染色体の非常な高効率導入・高発現は、EBNA1がtransに、DSとFRがcisに働ける条件でのみ得られること、DSとFRはその両者が必要であることが示され、さらにDSとFRの間にも未知の機能領域が存在する可能性が示唆された。高効率導入・高発現には人工染色体の核内への移行と転写亢進活性が寄与するが、DNA複製は関与しないことが分かった。さらに、細胞と導入法、アッセイ法の組み合わせによっては、ほぼ100%の細胞が導入遺伝子をきわめて強力に発現した。この実験事実は、非ウイルス的遺伝子導入が、実際には条件さえ整えば細胞外から細胞内へのDNA移送を非常に効率よく達成しており、それが遺伝子発現に結びつかないのは核内移送が制約条件になっていることを意味しているが、これは既存の遺伝子導入技術の常識を超える新しい事実である。したがって、遺伝子導入の効率を決定する最大の要因は、細胞内微小画分におけるDNAの挙動と安定性であるという、研究代表者らの仮説を強く支持する結果であるとともに、従来の遺伝子導入ベクター開発の方法論と計測手法にも一石を投じる知見が得られた。
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