研究概要 |
本研究課題では、EBV人工染色体の細胞内での移送,保持,分配のメカニズムを微小レベルで解明するとともに,細胞内での遺伝情報の送達,発現,維持の効率がさらに飛躍的に向上した次世代の遺伝子送達技術を開発し、システム細胞工学に資することを目的とする。平成18年度は、EBV人工染色体導入細胞内におけるEBNA1たんぱくとoriPの素機能、とくにDNAの核内移動、核内保持、複製の、導入発現効率に対する貢献度を検証するともに、細胞外から細胞内へのDNA輸送効率を検定した。その結果、遺伝子導入・発現における、EBNA1/oriP依存性の核内輸送、核内保持の重要性が示された。その一方で細胞外から細胞内へのDNA輸送効率については、EBVエレメントの有無にかかわらず、電気穿孔法やカチオニックリピッドによる方法において、非常に高い効率が達成されており、細胞内のDNAの挙動が遺伝子発現に主要な影響を与える事実が裏付けられた(Kishida et a1.,J. Biotechnol.投稿中)。一方で、蛍光色素でラベルした人工染色体とカチオニックリビッドを細胞に培養後、細胞内局在を解析する研究を行った。EBNA1は通常、核内に存在するが、実際にはその多くはクロマチンに結合しており、一部は核マトリックスにアソシエートしていることが分かった。ところがすくなくとも一部のEBNA1は、核膜、そして細胞質にも分布していること、実際カチオニックリピッドにて導入した直後のoriP-DNAは、主として細胞質でEBNA1とインタラクト後、核内に輸送されることが示唆された(Asada et a1.,J.Biotechno1.投稿中)。このEBNA1の特異な動態が、EBV人工染色体のさまざまな機能の発現を発揮する鍵を握るものと考え、現在EBNA1と結合するホスト因子の同定によりその分子的基盤の解明を試みている。
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