研究概要 |
1.ソルトリーチング法による血管足場の構築 電界紡糸法の問題点(造形性,造形精度,強度等)を解決するべく,ソルトリーチング法による足場構築について検討を行った.積層造形により作成した血管形状の鋳型の周囲に順次構造材料を積層コートし,溶解特性の相違を利用して内層から順に除去することで,所望材料により血管足場を構築する新規手法(犠牲層ディップコーティング法)を考案し,ソルトリーチング法の適用を行った.これにより,生分解性材料Poly(L-lactide-co-ε-caprolactone, PLCL)により,多孔質の血管足場を構築する基礎技術を確立した.そして,患者個人のCT情報に基づいて内頸動脈分岐部分のスキャホールドを構築し,有効性を確認した. 2.血管足場の形状/物理特性の評価 ソルトリーチング手法により構築される血管足場の特性(形状/物理特性)評価を実施し,人動脈壁の縦弾性係数と血管壁厚を再現できることを確認した.造形時の加工速度や物性値を変更することで,これらの値を連続的に調整できることを確認した(縦弾性係数を2MPaに設定可能).また,ソルトリーチングに適用するNaClの粒径を調整することで,任意の多孔度を実現できることを確認した. 3.In vitro培養による生体適合性評価 作成した血管足場の生体適合性を評価するべく,HUVEC(血管内皮細胞)によるin vitro培養を実施した.足場の多孔度を調整するとともに,足場表面に0.2% Type Iコラーゲンをコートすることで,HUVECの接着と生存を確認した.また,複雑形状を有する3次元形状の血管足場上に細胞を培養するためには,3次元培養環境を整備する必要があることを確認し,血流下で培養を促進するための培養システムの検討を実施した. 4.経血管的人工血管デリバリ手法の検討 人工血管シミュレータを利用して,極細径人工血管を,対象疾患領域に留置するための人工血管デリバリデバイスならびに手術法について検討を行った.この目的において評価用の手術環境を整備した.
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