研究概要 |
(平成18年4月-平成19年3月)の研究実績 1:単一ウイルス粒子の単一細胞への搬入。PDMSで細胞培養室とウイルス保留槽を作成し、間に幅約50μm,長さ1mmのトンネルを作り光ピンセットで蛍光染色したウイルスをウイルス貯留槽から細胞室に搬入し単一細胞に感染させることに成功した。ウイルスを搬入した細胞を6時間培養後ウイルスポリメラーゼに対する抗体で染色しウイルス増殖が観察できた。 2:インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼと相互作用する宿主蛋白質の一つEbp1のプロモーター領域を指標蛋白質GFPの上流に挿入しその発現を顕微鏡で観察すると細胞周期に依存して発現していることが明らかになった。また各細胞周期によるEbp1発現量をポリアクリルアミドゲル電気泳動後、免疫染色による解析でも同じ結果が得られた。 3:ウイルス感染によるEbp1の発現制御と修飾:Ebp1はインフルエンザウイルス、仙台ウイルス、PPRV,日本脳炎ウイルスなどRNAウイルス感染により発現誘導された。インフルエンザウイルスの場合発現誘導されたEbp1はウイルス感染時間とともに修飾を受け、感染8時間後その修飾量が減るとともにEbp1の量も減った。一方,仙台ウイルス感染では修飾は受けなかったし発現量に変化は見られなかった。RNAiによるEbp1発現抑制によりインフルエンザウイルスは増殖が上昇したが仙台ウイルスの場合、増殖抑制がみられた。逆に高発現系ではインフルエンザウイルスは増殖抑制になったが仙台ウイルスでは増殖への顕著な影響は見られなかった。この結果からEbp1がインフルエンザウイルスでは増殖阻害に働き、仙台ウイルスではウイルス増殖に必要な蛋白質と考えられる。インフルエンザウイルス感染ではEbp1は大きな修飾を受け、インフルエンザウイルス増殖へ影響ない構造になってしまうと考えられる。一方仙台ウイルスでは有効に利用するためその構造変換は起こさず発現誘導だけが起こっている。以上の結果は投稿準備中である。
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