本研究では植物の浸透圧ストレス条件下におけるトランスポーター遺伝子の機能を解明することを目指している。浸透圧ストレス誘導性単糖トランポーター遺伝子であるERD6A、ERD6B、ERD6Dは、乾燥・塩または低温などのストレス条件下で強く発現が誘導され、ERD6Aは主に植物の表層組織において、またERD6Bは維管束組織に特異的に発現していることを示した。また、ERD6Aはトランスゴルジ網や前液胞区画と考えられるオルガネラに局在し、ERD6Bは前液胞区画や液胞膜に局在することを示した。さらに、ERD6AおよびERD6BのT-DNA挿入変異体は、土植え植物体で乾燥ストレスに対する耐性が低下していることを明らかにした。これらのERD6は浸透圧ストレス耐性の獲得に関与していることが考えられた。一方、マイクロアレイ解析から強い浸透圧ストレス誘導性を示すカリウムイオントランスポーターをコードすると考えられるKUP6を見いだした。KUP6遺伝子は、乾燥・塩ストレス条件下およびアブシジン酸処理で強く発現が誘導された。KUP6遺伝子は根端および根の維管束で特異的発現を示し、細胞膜に局在することが明らかになった。KUP6遺伝子のT-DNA挿入変異体は土植え条件下で乾燥ストレスに対する耐性が低下し、過剰発現体では耐性が向上した。これらの結果から、KUP6を介したカリウム輸送系が植物の浸透圧ストレス耐性の獲得に重要な役割を持つ可能性が考えられた。シロイヌナズナの乾燥や塩ストレス誘導性のヒスチジンキナーゼ遺伝子に関してT-DNA挿入変異体を解析することによりAHK1が、浸透圧ストレスを受容して、耐性の獲得に働く遺伝子群の発現を正に制御する受容体であることを示した。さらに、AHK1遺伝子を植物中で高発現すると、多くの耐性遺伝子が高発現して植物の乾燥ストレス耐性が向上することを明らかにした。
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