植物のKチャネルの中でも膜電位センサーを持たないタイプのKチャネルである液胞膜TPKチャネルの性質を酵母液胞膜に発現させて検討した。たばこKチャネルTPKは細胞質内側が酸性化することによって、輸送活性が強くなることが知られている。今回イオン選択孔の置換体の中には、この性質が失われるものが存在した。イオン選択孔の構造がpH依存性に関係することが強く示唆された。 シロイヌナズナのKチャネルKAT1の構造と機能を明らかにするために、精製系について検討した。昆虫細胞系を用いて全長の蛋白質を生産させたところ、これまでには得られない量の蛋白質を精製することが可能となった。以前に、ペプチドにおいて昆虫細胞系で精製を行ったことがあるが、今回のように全長の蛋白質が得られることたことは、今後のKAT1の機能と構造解析に有効である。 野性株の酵母を巨大化する方法を用いて、巨大化細胞とその液胞膜の調製を試みてきたが、酵母の液胞膜に植物のKチャネルと同様のイオン輸送系が観察された。その本体は原核生物や真核生物に存在する陽イオン輸送体であり植物のイオンチャネル測定系として利用するにあたり、重要な知見であることからそのイオン特性について検証を行った。Caで活性化されることが明らかとなり、たばこKチャネルと類似の性質をもつことが明らかとなった。さらに、陽イオン選択性が低いことも予測されたことから、今後植物の液胞膜に存在するイオン輸送系の機能解析には、本遺伝子変異株を用いた解析がバックグランド電流を抑制する上で有効であることが示された。
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