1. タバコ培養細胞で発現させたコムギALMT1タンパク質の機能に関する電気生理学的解析 コムギALMT1遺伝子がコードするA1活性化型リンゴ酸トランスポーターの機能を詳細に解析するため、ALMT1遺伝子を導入した形質転換タバコ細胞を用いてパッチクランプ法により解析を行った。その結果、本輸送体は陰イオン輸送体であり、輸送活性は細胞外のA1により増大し、ランタンとガドリニウムでは増大しないこと、さらに陰イオンとして硝酸や塩素よりもリンゴ酸に特異性が高いこと、タバコ細胞においてA1で活性化されるリンゴ酸の輸送活性が、コムギ根のプロトプラストにおいて観察されたものと同程度あることを証明し、ALMT1タンパク質自身がA1で活性化されるリンゴ酸チャネルとして機能していることを明らかにした。 2. ALMT1遺伝子の発現制御 : 転写後制御の可能性 これまでに、日本で育種されたコムギ系統ではALMT1タンパク質の発現と機能が転写後制御を受けている可能性を見出していた。この制御因子の同定のため、ALMT1の転写量が同程度であるのにもかかわらず、A1耐性度が異なる系統の交雑を行い、後代(F2)において、A1感受性と耐性の個体数が1:3に分離するものを得た。すなわち、ALMT1遺伝子の転写後制御は1つの遺伝子で制御されている可能性が示唆された。現在、この遺伝子の同定に向けた解析を進めている。 3. ALMT1タンパク質の精製 ALMTタンパク質ファミリーの立体構造を明らかにするため、コムギALMT1タンパク質の精製を試みている。タバコ培養細胞(BY-2)にC末端Hisタグ融合ALMT1を発現させたところ、A1で活性化されるリンゴ酸放出がみられたことから、Hisタグ融合ALMT1は機能を保持していると考えられた。しかし、界面活性剤による可溶化や、Niカラム精製後の回収率が低くかったことから、現在他の異種発現系を用いて、ALMT1タンパク質の精製を進めている。
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