1.ケイ酸吸収遺伝子Lsi1の機能解析 アフリカツメガエル卵母細胞のアッセイ系を用いて他のNIPのケイ酸輸送活性をまず比較した。その結果、イネNIP1:1とNIP3:1は輸送活性を示さなかったが、ケイ酸吸収遺伝子Lsi1と同じNIP2に属するLsi6はLsi1と同様ケイ酸の輸送活性を示した。またLsi1の基質特異性を調ぺたところ、グリセロールに対して輸送活性を示さなかったが、尿素やホウ酸に対して輸送活性を示した。しかし、ケイ酸と等モルの尿素の共存下でケイ酸の輸送活性が影響されなかった。また等モルのホウ素の共存下で、ケイ素の輸送活性は20%減少した。これらのことはLsi1がケイ酸に対して高い親和性を持っていることを示している。さらにLsi1のケイ素輸送活性は水銀により阻害されたが、低温では阻害されなかった。 生育時期別にLsi1の発現量を調ぺたところ、出穂前後一時的に発現量の増加が見られ、ケイ酸の吸収量と一致していた。また明確な発現量の日周変動は見られなかった。 2.ケイ酸吸収遺伝子Lsi2の同定 新たに単離されたケイ酸吸収欠損変異体(lsi2)物を用いて、その原因遺伝子のマッピングと機能解析を行い、原因遺伝子の特定に成功した。この遺伝子の塩基配列を野生型(T-65)と変異体とで比較した結果、一塩基置換が起きており、その一塩基置換がアミノ酸をセリンからアスパラギンに変化させていた。この遺伝子の全長cDNAは2085bpであり、472アミノ酸のタンパク質をコードしていた。またこの遺伝子を変異体に導入し、相補性試験を行った結果、遺伝子を導入した変異体では野生型と同程度にケイ酸吸収能が回復していた。この遺伝子は主に根に構成的に発現し、その発現量はケイ酸の存在下で四分の一程度に減少した。この遺伝子にコードされているタンパク質はLsi1と同様、根の外皮と内皮に局在していた。しかし、Lsi1とは異なり、外皮と内皮の向心側に偏在していた。以上のことからLsi2遺伝子は細胞内のケイ酸を細胞外に輸送する過程に関与していることと推測される。
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