研究概要 |
1. 内向きケイ酸トランスポーターLsi1の輸送基質特性の解析 Lsi1の輸送基質選択性の機構を明らかにするために、Lsi1のNPA及びar/R selectivity filterの部分のアミノ酸を改変して、ケイ酸、亜ヒ酸、ホウ酸及び水に対する輸送活性をアフリカツメガエルの卵母細胞を用いて検討した。その結果、selectivity filterを構成する4アミノ酸のうち、1番目のアミノ酸を変化させても(GSGRからASGRへ)ケイ素や亜ヒ酸に対して輸送活性が見られた。しかし、2番目のアミノ酸を変化させたり(AIGR, GIGR)、NPAモチーフを改変したりすると(NPA, NPA-AIGR)ケイ酸やホウ酸、水の輸送活性が見れず、亜ヒ酸に関しては程度の差はあるもの輸送活性が見られた。Oocyteに発現させたそれぞれのタンパク質を抽出し、western blottingによってタンパク質の発現の有無を調べたところ、ケイ素の輸送活性をもつASGRのみnativeなLsi1と同様のバンドを呈した。しかし、ケイ酸の輸送活性が見られなかったタンパク質(AIGR, GIGR)は異なるバンドパターンを呈した。さらにNPAモチーフを改変したタンパク質(NPA, NPA-AIGR)についてはタンパク質の発現自体が見られなくなっていた。これらのことはタンパク質の立体構造や修飾にアミノ酸の改変が何らかの影響を与えてしまい、異なるバンドパターンとして現れたのだと考えられる。 2. 双子葉植物由来のケイ酸トランスポーターの更なる機能解明 ブルームキュウリとブルームレスキュウリの台木として用いられるカボチャ数品種のCmLsi1の配列を調べた結果、ブルームレス用台木のカボチャ品種の全ては242番目のアミノ酸が変異していることを明らかにした。またケイ酸吸収能力の異なるカボチャ2品種から単離したケイ酸トランスポーター遺伝子CmLsi1をイネのケイ酸吸収欠損変異体に導入し結果、新土佐由来のCmLsi1(ST)はイネのケイ酸吸収能を相補したが、スーパー雲竜由来のCmLsi1(SU)は相補できなかった。抗体染色で観察した結果、CmLsi1(ST)はイネ根の外皮と内皮細胞の細胞膜に局在しているのに対し、CmLsi1(SU)は細胞質内に局在していた。しかし、カボチャの根における局在性を抗体染色で観察した結果、CmLsi1(sT)とCmLsi1(SU)とも細胞膜に局在していた。これらのことは、イネとカボチャでは細胞内タンパク質のフォールディングまたはトラフィッキングの仕組みが異なっていることを示唆している。
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