研究概要 |
G蛋白質と直接相互作用してG蛋白質シグナルを増強する分子,あるいは逆に抑制する分子,また新たな細胞内シグナルネットワークを形成する分子を同定して、それらのin vitro, in vivoでの解析を行い、そのネットワークを調節するシステムの特異性と共通性を規定する分子基盤を築くとともに、その生理機能を解明することを本研究の目的としている.本年度は、線虫の遺伝学的解析からG蛋白質シグナルに関与することが示唆されていたRic-8Aが、GPCRの下流において一度不活性化されたGαに結合して再活性化することでシグナルを増幅する新しいタイプのG蛋白質活性調節因子として機能しうることを哺乳動物細胞を用いた実験から示した。具体的にはRic-8AがN末側301アミノ酸を介してGαqと相互作用すること、またin vitro系でRic-8AがGαqのグアニンヌクレオチド交換反応因子として働くこと、siRNAを用いたRic-8Aの発現抑制実験からGq共役受容体を介したERKの活性化と細胞内カルシウム濃度上昇にRic-8Aが関与すること、さらにGq共役受容体の活性化に伴いRic-8Aが細胞質から細胞膜へ移行することを明らかにした。 さらにニューロスフェア法で調製した神経前駆細胞を用いた実験、およびマウス胎児脳切片培養系での神経前駆細胞の蛍光標識と細胞遊走の実験から、従来私どもがシグナルネットワーク解析を行ってきたGqからJNKへのシグナルがマウスの大脳皮質形成時における神経前駆細胞の遊走を負に制御することを明らかにした。このように多細胞生物の発生過程、特に脳神経回路網形成時におけるG蛋白質シグナルネットワークの役割を解明していく上で有効な研究方法を確立した。
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