研究概要 |
G蛋白質は、細胞内外の刺激に応答してGDPの結合した不活性型からGTPの結合した活性型へとコンポメーションを転換し、下流へとシグナルを伝達する分子スイッチとして働く。これまでに、受容体から細胞内へのシグナルのトランスデューサーとして、また細胞の分化・増殖、小胞輸送、接着・形態形成や翻訳の制御因子として多彩な細胞機能に介在することが明らかにされてきた。本研究では、G蛋白質と相互作用してG蛋白質シグナルを増強する分子,あるいは逆に抑制する分子,さらにシグナル伝達の効率化および特異性に関与する新規分子群を同定して、その詳細な分子機構をin vitro, in vivoで明らかにすること、また、新規分子群の動的制御機構,細胞・組織レベルでの生理的役割を解明し,細胞内情報ネットワークの新たな構築を図るとともに,そのネットワークを調節するシステムの特異性と共通性を規定する分子基盤を明らかにすることを目的としている。本年度、以下の研究成果が得られた。(1)細胞膜の微小ドメインであるラフトのマーカータンパク質として知られるフロティリンがG蛋白質Gqと相互作用してG蛋白質共役受容体からSrcファミリーチロシンキナーゼ、p38MAPキナーゼへと伝わるシグナル伝達系の構築に重要な役割を果たしていることを見出した。(2)線虫の遺伝学的解析より見出されたRic-8の哺乳動物ホモログRic-8AとRic-8Bのうち、Ric-8AがGq共役受容体シグナルの増幅因子として働くこと、Ric-8AとRic-8Bでは相互作用するG蛋白質に選択性があり、その細胞機能が異なる可能性を見出した。(3)先に私共が見出したCdc42特異的RhoGEFであるFRGがCD47によるSrcファミリーチロシンキナーゼを介した神経細胞の軸策、樹状突起の伸長に関与することを明らかにした。
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