研究概要 |
G蛋白質は、細胞内外の刺激に応答してGDPの結合した不活性型からGTPの結合した活性型へと転換し、下流へシグナルを伝える情報転換因子である。ホルモン、神経伝達物質の情報伝達にとどまらず細胞の分化・増殖、小胞輸送、接着・形態形成や翻訳の制御因子として多彩な細胞機能に介在することが明らかにされてきた。本研究では、G蛋白質と相互作用してG蛋白質シグナルを制御する新規分子群を同定して、その詳細な分子機構を明らかにすること、さらに新規分子群の動的制御機構,細胞・組織レベルでの生理的役割を解明し,細胞内情報ネットワークの新たな構築を図ることを目的としている。本年度、以下の研究成果が得られた。(1)大脳皮質形成異常の原因遺伝子であるオーファンG蛋白質共役受容体GPR56の細胞外ドメインに対する抗体を作成し、胎児脳切片を用いた免疫組織化学的解析および神経前駆細胞のウエスタン解析を行い、GPR56が細胞外のGPSドメインで切断された成熟体として神経前駆細胞の膜表面に発現していることを示した。さらにGPR56が3量体G蛋白質G12/13を介してRhoの活性化、そしてアクチン細胞骨格系の再編成、SRE、NF-kBを介した転写活性化を誘導することを明らかにした。また、G12/13-Rhoの経路を介してGPR56が神経前駆細胞の遊走を負に制御していることを見出した。(2)好中球の活性酸素産生系の重要な因子であるRacを活性化するグアニンヌクレオチド交換因子P-Rex1の活性調節機構を種々の変異体を用いて解析を行った。その結果、G蛋白質βγサブユニットによるP-Rex1の活性化にはP-Rex1の分子内に存在するIP4Pドメインと2nd DEP/1st PDZドメインの相互作用が必須であること、またこのドメイン間相互作用がPKAによるリン酸化により阻害されP-Rex1の活性抑制が起こる可能性を示した。(3)Gq特異的な阻害剤YM-254890とGq蛋白質との複合体の結晶を得ることに成功し、X線結晶構造解析を行い複合体の立体構造を明らかにした。
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