研究課題
アンジオテンシンII受容体刺激によるMAPキナーゼの活性化には活性酸素を必要とすることが血管平滑筋で報告されている。また、心臓においても活性酸素が細胞内シグナリング経路を活性化しうることが報告されつつある。そこで、ラット新生仔心室筋細胞を用いMAPキナーゼの活性化に活性酸素が必要か、必要ならばその生成機構および生理応答との関係はあるのかについて解析した。各種の細胞内シグナリング分子の機能を阻害するドミナントネガティブ体あるいは低分子化合物の阻害剤を用い、次のような受容体刺激からMAPキナーゼ活性化までの経路を明らかにした。アンジオテンシII受容体(タイプI)が三量体G蛋白質G_<12>/G_<13>を活性化しαとβγサブユニットに解離させる。Gα_<12>/Gα_<13>は低分子量G蛋白質Rhoの活性化を引き起こし、さらにRhoはRhoキナーゼ(ROCK)を介しRhoとは異なる低分子量G蛋白質Racの活性化を引き起こす。RacはNADPHオキシダーゼ複合体のコンポーネントの一つであり、その活性を増加させる。これにより活性酸素産生が増加する。活性酸素を消去させると3種のMAPキナーゼ(ERK、JNK、p38MAPK)のうちJNKおよびp38MAPKの活性化のみが抑制された。さらに活性酸素の消去あるいは産生抑制は受容体を介した心肥大応答(アクチンの再構築、BNPの産生亢進、タンパク質合成の促進)を抑制した。本研究によって、受容体刺激によるMAPキナーゼ活性化さらに心肥大応答という生理的な細胞内シグナリング経路に活性酸素が関与していることが明らかになった。また、心筋線維芽細胞においてもアンジオテンシンII受容体を介したNFATの活性化に活性酸素が関与していることも見出した。これらの結果から、活性酸素がこれまで考えられていた以上に細胞内シグナリングに積極的に関与していることを示すことができた。
すべて 2005
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