研究課題
本年度は心臓の三量体G蛋白質G12ファミリーに属するG蛋白質(Gα12/Gα13)の機能を明らかにする研究の仕上げを行った。この目的のために、我々はすでにGα12/Gα13の阻害するポリペプチドを心筋細胞選択的に発現させたトランスジェニックマウスを作成している。このマウスの横行大動脈を狭窄し心臓に圧負荷をかけたところ、心肥大形成は野生型と同様に生じた。しかし、心肥大に付随して生じる線維化(コラーゲンなどの細胞外マトリックスの過剰な蓄積)は抑制された。新生仔心室筋細胞を用いたin vitroの結果より、負荷によりパネキシンを通ってUTPやATPなどのヌクレオチドが遊離し、線維化促進因子の発現を亢進させていることが明らかになった。また、ノックダウンおよび阻害剤を用いた結果より、P2Y6プリン受容体の関与が示唆されたことから、in vivoの圧負荷モデルマウスにP2Y6選択的な拮抗薬MRSを投与し圧負荷による肥大と線維化がどのように影響されるか検討した。その結果、圧負荷による線維化のみが抑制された。次に、Gα12/Gα13が線維化を仲介しているならば、活性型のGα12あるいはGα13を心筋細胞選択的に発現させると肥大は生じず線維化のみが起こるはずである。そこで、活性型のGα13を心筋細胞選択的に発現させたところ、心臓の肥大は生じることなく線維化のみが生じた。すでに圧負荷による心肥大はGqファミリーを介して生じることが示されていることから、心臓では三量体G蛋白質のGqが肥大を仲介しG12/G13が線維化を仲介していること、すなわち機能の分担がなされていることが明らかになった。また、これまで線維化は心肥大に付随する現象だと考えられてきた。しかし、本研究によって、線維化は心肥大とは独立して引き起こされる現象であることが明らかになった。
すべて 2009 2008 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
EMBO Journal 27
ページ: 3104-3115
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 28
ページ: 841-849
Journal of Immunology 181
ページ: 7332-73340
http://210.233.60.66/~chudoku/