研究概要 |
細胞内での分子の輸送はこれまでGTP結合蛋白質(G蛋白質)のなかでもRabファミリー、Arfファミリー分子によって調節を受けると考えられてきた。さらに、これらの分子が輸送される小胞やGolgi, endsomeに局在していることが輸送を調節する上では不可欠と考えられてきた。しかし、本研究班では、細胞膜でG蛋白質が活性化されるだけでもVascular endothelial cadherin (VE-cadherin)分子の輸送が増加することを発見した。つまり、輸送の調節は輸送される分子を含む細胞内小器官に直接G蛋白質が局在しなくても、G蛋白質が輸送にかかわることを示した。本研究では、G蛋白質のなかでもRap1分子の活性化により、VE-cadherin分子の細胞内から細胞間接着部位への輸送が促進されることをイメージングによって明らかにすることができた。Rap1の活性化による細胞間接着の増強は、接着分子輸送の増強作用にあることを示した。 主な研究成果 (1)分子の細胞膜局在化を人為的におこすために、FKBP-FRBシステムを用いた。これは膜局在のためにミリスチン酸化シグナルとFRBを融合した蛋白質を細胞に発現し、さらにFKBPに膜に移行させたい分子を融合させて、ラパマイシンを投与することによって分子を細胞膜局在化を起こすシステムである。Rap1のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF) C3Gを細胞膜局在化させるとendosomeからのVE-cadherinの膜への輸送が促進された。 (2)Rap1を活性化するほかのGEFも同様に検討したところVE-cadherinの細胞膜移行を促進した。 (3)Rap1の水解促進因子のrap1GAPIIの強制発現によって、VE-cadherinの輸送が抑制され、細胞間接着部位でのVE-cadherinの接着が減弱した。
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