研究課題
細胞周期におけるS期は単に正確に染色体DNAを複製するだけではなく、正確な染色体分配の為に必要な構造-染色分体間接着(コヒージョン)-を複製された染色体の上に構築していく時期でもある。近年、染色分体間接着因子(コヒーシン)そのものについての構造と機能に関する理解が深まって来た一方で、いかにしてコヒーシンが二本の染色体を繋ぎ止めるのか、染色分体間接着の確立がどのように達成されるのかといった接着確立の分子機構については未解明の部分が多い。私は、コヒーシン確立因子、Ctf4、8、18、Dcc1、Eco1についてその局在を各細胞周期においてChIP-chip法を用いて解析した。その結果、Eco1を除く全てのタンパクがS期初期にHU (Hydroxy Urea)で同調したS期細胞において、複製領域へ局在することが示された。Eco1では現在までのところ有意なシグナルは検出されない。この実験結果からは、二つの可能性が考えられる。即ち、これらの因子がHU依存的にフォークへリクルートされるのか、あるいは複製伸長因子の一つとして複製フォークとともに動いている可能性である。そこで、同様の解析を、Ctf4、Ctf18についてHUによる複製ストレスを与えない状況で行ったところ、Ctf4は複製フォークへの局在を示す結果が得られたがCtf18については有意な局在を示す領域は存在しなかった(Dcc1についても同様の結果を得た)。このことはCtf18がHU依存的にフォークへリクルートされる因子であることを示唆している。さらに、Ctf18単独欠失株での、HU存在下の複製伸長因子の局在を解析した。その結果、複製伸長因子はは野生型に比べ分布が広がり、さらに、通常はHU存在下でチェックポイント依存的に活性が抑制される後期複製開始点が活性化されていた。この結果は、Ctf18が複製チェックポイントの上流で(おそらく、フォークに生じる異常な構造の認識を通して)少なくとも機能しており、その欠損はフォークの不安定化を引き起こすことを示している。現在、複製フォークの安定性とコヒージョンの確立の連携について、直接的連携か、間接的連携かを含め解析を進めている。
すべて 2006
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Nature (article) (In press)