研究概要 |
遺伝情報を次世代に正確に継承するために、染色体複製は開始段階で巧妙な制御を受けている。またチェックポイント制御、染色体接着や分配など重要な染色体機能と密接に関連するしくみを持っている。平成21年度(一部平成22年度に繰越)染色体複製の制御に関して以下のことを明らかにした。 1.分裂酵母セントロメアと性決定領域ヘテロクロマチンにおいて、HP1がDDKと直接相互作用しSld3の複製開始点への結合を促進し、S期初期に複製させるしくみを解明した。 2.サブテロメア領域ではテロメア配列結合蛋白質Taz1ならびにRif1が複製開始抑制に関与し、複製時期を遅くすることを見いだした。 3.分裂酵母Sld3ならびにDrc1/Sld2がCDKによるリン酸化依存的にCut5に結合し、これらの複合体形成が複製開始点での複製因子集合に必要であることを示した。 4.分裂酵母でオーキシン依存的タンパク質分解系を開発し、Mcm10がCMG複合体形成には寄与せず、CMG複合体ヘリカーゼによる複製開始点のunwindingに必要な機能を持つことを示した。 5.レプリソーム進行複合体RPCが脊椎動物Xenopus卵抽出液中で形成されることをはじめて明らかにした。 6.植物ホルモンオーキシン依存的に高等動物細胞(DT40)において標的タンパク質を短時間で分解する系を開発し、幅広い応用を可能にした。 7.クロマチン構造変換因子FACTが複製装置複合体と結合し、複製進行を促進することを示唆する結果を得た。 8.ヒトMCM2-7とTIM,TIPIN,Rb,p27,Claspin,MCM10,CDC45との相互作用ならびにMCM-BPとMCM7との相互作用を昆虫細胞共発現により明らかにした。
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