複製フォーク複合体を染色体サイクルでの複製と染色体恒常性維持との共役点としてとらえ、ヒトおよび古細菌の複製因子PCNAを中心とする機能的複製フオーク複合体の構築原理の解明を進め、次の研究成果を得た。 1. Ctf18複合体によって特異的に促進されるDNAポリメラーゼとしてヒトPol etaを同定した。さらに、pol etaはCtf18-RFCだけでなくRFC複合体とも物理的に相互作用する事を明らかにした。このことからクラプだけでなくローダーP複合体もDNAポリメラーゼの機能制御因子である事を示した。 2. 複数のローダー相互作用困子の網羅的解析をしたところ、RFC複和体、Ctf18複合体およびチェックポイント因子Rad17複合体がいくつかの複製因子と共通の相互作用を持つ事を明らかにした。つまりローダー複合体はいくつもの複製因子の機能制御に関わる中心的因子であることを示唆している。 3. チェックポイントクランプRad9-Hus1-Rad1複合体のRad9タンパク質のC末端がCKIIキナーゼにより特異的にリン酸化され、その変異がDNA損傷応答に重要であることを明らかにした(釣本)。 4. 古細菌DNAリガーゼ全分子の結晶構造を解明し、DNAリガーゼ活性がPCNAによって促進されること、両蛋白質間の新しい相互作用様式があることを発見した。またこのDNAリガーゼが岡崎フラグメントを連結する過程の複合体の電子顕微鏡による単粒子解析を行った(石野)。 5. 古細菌の修復系因子Hef蛋白質のヒトオルソログでファゴニ貧血症の原因遺伝子(FANGM)であるヒトHef(hHef)の発現系を構築しその機能解析を行った。またHef以外にもフォーク構造特異的なヘリカーゼを古細菌から発見し、Hjmと名付けて、その性質解析を行った(石野)。
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