相同組換えの中心的な反応は、相同DNA間での鎖交換反応である。DNA鎖交換反応の素反応は、一方のDNA鎖が相同なDNA鎖へ移行する反応であり、この反応が両鎖で同調して起これば、Holliday構造が形成される。バクテリアのDNA鎖交換反応触媒酵素(リコンビナーゼ)であるRecAタンパク質には、両鎖の交換反応を相互に起こす活性(Holliday構造形成活性)があることが知られていたが、ヒトを含む真核生物のリコンビナーゼでは、一方のDNA鎖が相同なDNA鎖へ移行させる活性しか見つかっておらず、真核生物のリコンビナーゼには、Holliday構造形成活性はないと、長らく考えられてきた。我々は、分裂酵母のリコンビナーゼRhp51を使い、試験管内でHolliday構造を形成させることに成功した。さらに、Hollidayジャンクションの移動反応(branch migration)には、Rhp51による、ATPの加水分解が必須であることを証明した。3本鎖交換の場合には、ATPの結合だけで十分であるので、このことは非常に重要な特徴である。RecAとの最も大きな違いは、鎖交換の方向性であった。すなわち、RecAによる鎖交換は、5'→3'方向であったが、Rhp51の場合、3'→5'方向であった。このRhp51の方向性は、現在広く受け入れられている組換え反応の分子機構に完全に合致した。さらに、ヒトRad51リコンビなーゼも分裂酵母Rhp51リコンビナーゼと同じ方向性でホリディ構造の形成と移動反応を触媒することも発見し、この反応機構が真核生物に広く普遍的であることを証明した。
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