研究概要 |
真核生物の複製開始機構を理解するため、出芽酵母を材料として研究を進めている。また、複製に関与するタンパク質が同時に、細胞周期チェックポイントや細胞分裂に関わることもあるため、その解析も平行して行っている。複製の開始に必要なサイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、出芽酵母のSld2タンパク質とSld3タンパク質をリン酸化し、リン酸化されたこれらタンパク質はDpb11タンパク質に結合する。この結合がCDKによる複製開始活性化に必須でかつ最少限必要な過程である。Sld3のパートナーであるCdc45タンパク質の変異JET1は、Sld3のCDKによるリン酸化の必要性をバイパスすることができる。しかし、その理由は明確には分かっていない。そのため、JET1によりサプレスされる変異の分離を試みたが、現在までのところSld3, Cdc45の変異以外は得られていない。一方、Sld3と結合するSld7の変異がJET1によりサプレスされることを見いだした。実際に、Sld7の有無により、Sld3のCDKによるリン酸化が僅かではあるが促進されることを確認した。さらに、Sld7変異は複製の欠損だけでなく、微小管重合阻害剤に感受性を示すため、細胞分裂への関与が示唆される。Sld7がどのように細胞分裂に関与するのかを調べるため、細胞に多コピー導入すると感受性がサプレスされる遺伝子の取得を試みた。いくつかの候補を得たが、すぐにSld7との関係を類推できるものはなく、今後の解析が必要である。
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