研究課題
遺伝子の増幅はDNA複製と組み換えの共役によって進行すると考えられる。本研究ではその共役のメカニズムについて、リボソームRNA遺伝子(rDNA)をモデルに解明を目指す。増幅組み換えに必要な要素として、これまでDNA2本鎖切断を引き起こす複製阻害点と、その切れた断片をswitch backさせ、一度複製された鋳型DNAを再度複製させるnoncodingな転写機構の存在を明らかにして来た。本年度は複製開始活性と増幅効率の関係について解析を行った。まず150コピーあるrDNAを2コピーまで減少させた株の複製開始点を欠損させ、それが増幅に与える影響を調べた。コントロールとして用いた複製開始点を正常に持つ2コピー株に複製阻害遺伝子FOB1を導入するとrDNAの増幅が誘導されるのに対して、複製開始点欠損株では全くコピー数は増えなかった。さらにその株に新たに別の複製開始配列を挿入すると増幅能力が完全に回復した。これらの事は複製開始活性が増幅に必須である事を示している。さらに複製開始配列を改変しその開始頻度を変化させた株を作成し、増幅効率に与える影響を調べた。その結果、開始頻度が低下すると増幅効率も下がり、開始頻度が増幅効率を左右している事が判った。また、複製開始活性はrDNAから組み換えによって切り出されたプラスミド状分子(Extra-chromosomal rDNA circle、ERC)の安定性にも影響を与えた。複製開始活性を強めた株ではERCが多コピーで安定に保持され、逆に複製開始活性を弱めた株ではほとんど検出されなかった。ERCは母細胞に蓄積し細胞老化の原因になると考えられているが(老化のERC仮説)、この複製開始活性を弱めた株の寿命を測定したところ、面白いことに結果は逆で、寿命は短縮した。現在この株の老化の原因について検討している。
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