rDNAの不安定性と細胞老化の関係について 出芽酵母は老化現象を示す最も単純な生物である。1つの細胞(母細胞)は細胞分裂(出芽)の度に老化し約20回の分裂の後死ぬが、母細胞から産まれる娘細胞はリセットされ「若返り」を起こす。昨年までの報告者らの研究によりリボソームRNA遺伝子(rDNA)が母細胞特異的に不安定化しそれが寿命の制限要因となっている可能性が判明した(論文投稿中)。今年度は様々な寿命に関わる変異株で母と娘細胞のrDNAの安定性について調べた。その結果、寿命が野生株に比べ約60%延長することが知られているfobl変異株では、母と娘細胞のrDNAは共に安定で差がほとんどないのに対し、寿命が約半分に短縮するSir2変異株では母細胞のrDNAは娘細胞に比べて不安定性であり、その差も拡大していることが判明した。以上の結果はrDNAの安定性が母細胞の寿命を決定していることを示している。今後母特異的なrDNA不安定化のメカニズムについて解析する。 in vitro複製阻害系の構築 rDNAの不安定性は複製阻害タンパク質Fob1に依存している。Fob1はrDNAの転写終結点近傍に結合し、そこでrDNAの転写と衝突する方向の複製を止めて組換えを誘導する。Fob1の生理活性を調べるためにin vitroでの複製阻害検出系の構築を試みた。方法としてはFob1の結合配列を含む2本鎖DNAを合成し、そこに複製フォークの進行を司るDNAヘリカーゼ(MCM複合体)を混ぜ、Fob1の有無でヘリカーゼの活性に変化が生じるか否か調べた、その結果、反応液中にFob1があると確かにMCMヘリカーゼ活性による2本鎖DNAの開裂が阻害された。しかしその反応にはin vivoで見られたような方向性はなく、非特異的な反応である可能性がある。そこでin vivoでFob1の極性を強める働きがあるRrm3タンパク質を精製した。現在Rrm3を添加した系でin vitroの解析を進行している。
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