研究概要 |
rDNAの不安定性と細胞老化の関係について 出芽酵母は老化現象を示す最も単純な生物である。1つの細胞(母細胞)は細胞分裂(出芽)の度に老化し約20回の分裂の後死ぬが、母細胞から産まれる娘細胞はリセットされ「若返り」を起こす。昨年までの報告者らの研究により、リボソームRNA遺伝子(rDNA)が母細胞特異的に不安定化し、逆に娘細胞では回復しており、それが母細胞での老化、娘細胞での若返りにそれぞれ寄与していることが判明した(Ganley et al.,2009)。今年度はその分子機構について解析した。その結果母細胞に残留し分裂の度に蓄積していくエピゾーム(プラスミド)が母細胞のrDNAを不安定化していることが判明した。ただその不安定化したrDNAが娘細胞に渡される時に回復する機構(若返り機構)は以前不明であり、今後解析を続けていきたい。 rDNAの不安定性を引き起こす複製阻害の分子機構 rDNAの不安定性は複製阻害タンパク質Fob1に依存している。Fob1はrDNAの転写終結点近傍に結合し、そこでrDNAの転写と衝突する方向の複製を止めて組換えを誘導する。Fob1の生理活性を調べるためにin vitroでの複製阻害検出系の構築を行った。方法としてはFob1の結合配列を含む2本鎖DNAを合成し、そこに複製フォークの進行を司るDNAヘリカーゼ(MCM複合体)を混ぜ、Fob1の有無でヘリカーゼの活性に変化が生じるか否か調べた、その結果、反応液中にFob1があると確かにMCMヘリカーゼ活性による2本鎖DNAの開裂が阻害された。 また、Fob1を大量に精製し構造の決定を行っている。現在活性を持つ最小の大きさまで小さくしたFob1を用い、有望な結晶がいくつか得られており立体構造解明に向けて着実に進んでいる。
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