組換えは遺伝情報の多様性獲得や子孫への継承に重要な役割を果たす。減数分裂においては、組換え酵素の活性化およびクロマチン構造の変化とともに組換えが顕著に上昇するが、その分子メカニズムに関しては不明な点が多い。組換え活性化の律速段階は、組換え開始部位でのDNA二本鎖切断であり、種々の階層の染色体エレメントと密接な関係を持つことが明らかになりつつある。本研究では、DNA切断酵素Spo11およびその関連因子と、DNA複製・複製チェックポイント・クロマチン再編成因子・ピストン修飾・姉妹染色体結合・セントロメアなどの関係について、種々の分生物学、遺伝学、生化学手法を統合的に利用する一方、ゲノムタイリングチップークロマチン免疫沈降(ChlP-chip法)や、プロテオミクス手法を利用したりして、組換えを中心とした染色体ネットワークの全容を解き明かす。 本年度は、Spo11複合体を単離し、その組成を微量質量分析で解析した。その結果、Spo11複合体がRec102とRec104、およびSki8と結合していることをはじめて生化学的に示すことができた。また、ReG102、Rec103/Ski8、Rec114などについてのゲノムワイドのChlP-chip法で解析を行い、組換えホットドメインとコールドドメインにおける各因子の分布の違いが存在し、これによりSpo11の活性が制御されていることを示した。さらに、分裂酵母組換えホットスポットの減数分裂期クロマチン再編成に関わると考えられる新たなATP依存型クロマチンリモデリング因子Snf21が、有糸分裂の過程に必須の役割を果たすことを明らかにした。この遺伝子の温度突然変異株の解析などから、この因子がセントロメアにおいて、染色体分離にきわめて重要様な役割を果たすことを発見した。さらに、分裂酵母組換えホットスポット配列周辺にみられるノンコーディングRNAのクロマチン再編成における役割を明らかにした。
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