研究概要 |
1.ヘテロクロマチン構造確立のメカニズムの解明 1)siRNAの動態解析(中山):分裂酵母では、ヘテロクロマチン構造の確立過程にRNAiと良く似た機構が関与し、Ago1はその中心的な役割を果たす因子である。本年度我々は、このAgo1と相互作用する、新規の因子として単離されたArb2の機能解析を進めた。その結果、Arb2の遺伝子破壊株は他のRNAi因子欠損株と同様の表現型を示すこと、またArb2はクロマチン上には局在せず、二本鎖RNAを取り込んだAgo1が一方のRNA鎖を切断する過程に、特に重要な役割を果たすことを明らかにした。 2.ヘテロクロマチン構造維持・動態のメカニズムの解明 1)クロマチンアッセンブリー因子の機能解析(村上):これまでに分裂酵母のCAF1がヘテロクロマチンの維持に関わることを明らかにしてきた。本年度我々は、胞子形成の際におこる接合過程が、CAF1破壊株では著しく阻害されていることを見いだした。接合には窒素源枯渇にともなうG0期移行が必要であるが、このG0期においてヒストンH3の量がCAF1欠損株では野生株に比較し顕著に減少していた。G0期は核構造・クロマチン構造の大きな変化が起こると思われるがその実態は明らかにされておらず、我々の知見はこの過程にCAF1が関与することを示唆している。 2)ヘテロクロマチン境界領域決定機構の解明(沖):出芽酵母のHMR遺伝子座では、Sir2p, Sir3p, Sir4p蛋白質複合体により高次クロマチン構造が形成されていることが知られている。本年度我々は、Sir3p抗体を用いたクロマチン免疫沈降法(ChIP)を行うことで、HMR左側境界領域の解析を行った。その結果、HMR左側の境界領域にはトランスポゾンであるTy1-LTRとTy5-LTRが存在する事が明らかになり、これらの因子が境界形成に重要な役割を果たすことが示唆された。
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