研究概要 |
Cdt1はORC/CDC6と共に、複製ヘリカーゼMCM複合体のloading機構を形成し、染色体複製の細胞周期制御を行っている。S期以降は再複製防止のために、Cdt1はgeminin結合に加えて、Cdkリン酸化依存性SCF-Skp2ユビキチンリガーゼ及びPCNA依存性Cu14-DDB1ユビキチンリガーゼによる分解制御を受けていることを、藤田と西谷は明らかにした。西谷はさらに、CDKインヒビターp21もPCNA依存的にCu14-DDB1により分解されることを明らかにした。PCNA依存性Cu14-DDB1によるこれらのタンパク質の分解は、重要なG1-S期移行制御機構の一つであろう。また藤田は、Cdt1がAPC/C^<Cdh1>ユビキチンリガーゼによる制御も受けていることを明らかにした。これらの厳密な制御から予想される通りCdt1の脱制御は染色体不安定性を誘導した。そしてCdt1の生理的・病態生理的機能に、Cdt1新規結合蛋白であるtopoisomerase及びSNF2が関与していることが示唆されつつある。加えて藤田は、ORCが主にテロメア結合蛋白TRF2との結合を介してテロメアに集積し、テロメアにpre-RCが細胞周期依存的に形成されること、そしてORCがテロメア恒常性維持に重要であることを明らかにした。これは、複製開始制御とテロメア制御と言う核内の重要なイベントを関連づける新しい視点の発見である。一方水野は、ほ乳動物細胞の複製前複合体の試験管内再構成に向け取り組んだ.マウスORC1-5,Cdt1,CDC6,MCM2-7を発現・精製し、ポリグルタミン酸脱凝縮カエル精子核を鋳型としてpre-RCを再構成させた。gemininにより不活1生化させたカエル卵抽出液中で標識dCTPの取り込みを測定し複製前複合体の活性を評価した。ORCに依存したdCTP取り込みが認められたことから、試験管内でのpre-RC構築に成功したものと考えている。
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