本特定領域研究の主要課題は、チャネルやトランスポーターの機能を中核とした分子複合体の実体を解明し(A01班)、そのオルガネラや細胞レベルにおける相互作用や形成機序を明らかにし(A02班)、さらには個体や病態レベルにおける機能に迫ることである(A03班)。A02計画班として、興奮性細胞に構築されるチャネル間機能共役の場である結合膜構造に着目した研究を遂行する。具体的には、結合膜構造の分子構築を理解し、そこでのCa2+チャネル間の機能共役を解析することを計画した。平成17年度には、以下の実験を展開した。 1)骨格筋における結合膜構造に関する研究 骨格筋においては、細胞表層膜と小胞体が近接した三つ組構造(triad junction)が形成され、両膜系にソーティングされるCa2+チャネル(DHP受容体とリアノジン受容体)の機能共役により、筋収縮のためのCa2+シグナルが形成される。以前の研究にて、三つ組構造形成に必須な分子としてジャンクトフィリン(JP)を単離しているが、JP欠損骨格筋においてストア容量依存性Ca2+流入活性が顕著に低下していることを新たに見い出した。このCa2+流入はDHP受容体とは異なる未知のCa2+チャネルによるものであることが知られており、結合膜構造はストア容量依存性Ca2+流入の活性化機構にも重要であることが判明した(論文投稿中)。 2)中枢神経系における結合膜構造に関する研究 神経細胞にはJP3とJP4と命名したジャンクトフィリンサブタイプが発現しており、筋細胞における実験結果から、神経細胞に観察されるsubsurface cisternと呼ばれる結合膜構造の形成に寄与するものと推定される。JP3とJP4を同時に欠損する変異マウスの作製に成功し、現在その解析を進めている。変異マワスの海馬錐体細胞においては膜興奮性に異常があり、長期増強の可塑性も障害されており、個体レベルでの記憶学習障害も認められた。従って、中枢神経細胞における結合膜構造の生理的重要性が明らかにされた(論文投稿中)。
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