研究課題
結合膜構造を形成させるタンパク質であるジャンクトフィリン(JP)の4種のサブタイプの中で、中枢系ではJP3とJP4が共発現しており、互いに機能的に補完している。JP3とJP4同時欠損(JP-DKO)マウスでは運動学習の機能低下か観察され、小脳の機能異常が示唆された。平行繊維と登上線維より入力される小脳プルキンエ細胞(PC)の検討で、膜興奮→電位依存性チャネルによるCa2+流入→リアノシン受容体による小胞体Ca2+放出→Ca2+依存性K+チャネルの開口、というチャネル機能共役によりAHP相が形成されることが示された。JP-DKO PCては、このCa2+仲介性チャネル共役によるAHP相が欠損し、それに起因すると考察されるproteln kinase Cの過剰活性化、転写調節因子の発現異常なども観察され、さらに、運動学習の基盤である長期抑圧が形成されない。したがって、JP3とJP4は協調して神経細胞内で結合膜構造を構築し、上述のチャネル間機能共役を成立されるものと考察される。小胞体の新規分子の検索で見出されたTRICチャネルは、3本の膜貫通セグメントを有するタンパク質が三量体を形成し、一価陽イオン選択的なイオンチャネル活性を示す。胎生期心不全を示すTRICチャネルの完全欠損マウスでは、心筋細胞におけるリアノジン受容体によるCa2+放出が抑制されており、小胞体のCa2+過剰負荷が観察された。TRICチャネルの欠乏マウスの骨格筋では、リアノジン受容体にCa2+放出の部分的な抑制、小胞体Ca2+放出に伴う過剰な膜電位の発生などが観察された。したがって、細胞内環境で主にK+を透過するTRICチャネルは、小胞体Ca2+放出に伴い発生する膜荷電を中和するカウンターイオンチャネルとして機能するものと考察される。
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http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/biochem/