研究課題
骨格筋細胞においては収縮反応により表層膜損傷が多発するため、それに伴う細胞死を回避するために特殊な膜修復機構を装備している。膜修復能力の低下を示す筋ジストロフィー患者が近年見いだされ、分子機構不明な膜修復機構が注目されている。最近遂行中の我々の研究では、筋特異的に発現しているミツグミン53(MG53)という新規タンパク質の機能に注目している。一次構造決定により、心筋と骨格筋に特異的なMG53はRing, B-box, coild-coil, PRY, SPRYドメインを有する新規RBCC/TRIMファミリー分子であることが明らかになった。MG53は膜貫通セグメントや脂質修飾モチーフを持たないが、リン脂質との相互作用により膜結合タンパク質として振る舞うことが細胞分画実験で判明した。さらに、免疫染色実験からは、MG53は筋細胞表層膜および、その直下に分布する微小な小胞上に存在するものと結論された。一方、青色色素投与後の運動負荷実験で、MG53欠損マウスの骨格筋に大量の色素流入が観察された。MG53欠損マウスの筋組織では、10月齢以降になると筋細胞の大きさの不揃いや中心核が観察された。上記のMG53欠損骨格筋の異常は、典型的な進行性筋ジストロフィー症状と一致した。さらに、微小ガラス管による物理的および紫外線レーザーによる光学的膜障害モデル実験において、MG53欠損骨格筋は極端に脆弱化している。蛍光標識MG53を筋細胞に発現させて膜障害を負荷すると、障害部位へのMG53の集積が観察された。また、このMG53の動態は分子内のSH基の酸化依存性に生じることも示された。上記の結果から、膜損傷時に細胞外の酸化環境への暴露に伴いMG53分子内Cys残基が酸化され、細胞膜直下の小胞とともにMG53が損傷部位に集積し、膜修復に当たることが予想された。
すべて 2009 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
Nature Cell Biol. 11
ページ: 56-64
J. Biol. Chem 284
ページ: 3314-3322
Pflugers Arch. 457
ページ: 771-783
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/biochem/