研究課題
様々な生物でのゲノムの解析と遺伝子解析の結果、1遺伝子1機能という従来の考えでは理解できない現象が報告されるようになってきた。これに対して全体をシステムとして考えるアプローチがなされているが、過度に抽象化により実体を持つタンパク質が記号となってしまっている。そこで研究では、分子実体を伴ったシステムとしての膜輸送系ネットワークの構築とシミュレーションの実現を目指している。柱としては、相互作用ネットワークの構築とそれらがどのように相互作用するのか(複合体構造の予測)及び大規模な蛋白質膜系のシミュレーションである。相互作用ネットワークの構築に関しては、これまでDNAマイクロアレイデータを利用して、ヒト、マウスの遺伝子共発現データベースの構築を行ってきたが、本年度はラットの共発現情報を追加した。また、蛋白質問相互作用データと遺伝子共発現データは相補的であることが分かってきたので、あらたに蛋白質問相互作用データの追加も行った。結果は、COXPRESdbとして公開した。また、蛋白質問相互作用データベースとして、HINTdbの拡充を行いHINTdbから共発現データを取得できるようにした。複合体の構造予測に関しては、1これまで開発してきた方法を発展させて、既知の複合体を分類し、その相互作用種別ごとに評価関数を構築するという方法を開発した。この方法で、複合体予測コンテストに今年も参加したが、従来よりも良い結果を得ることが出来るようになってきた。大規模な膜蛋白質系のシミュレーションに関しては、これまで行われてきた純膜での計算ではなく、より生体に近い複合脂質膜(DPPC+コレステロール)を構築し、モデル膜蛋白質としてアラメシチンを含む系の大規模シミュレーションを行った。その結果、これまでほとんど観察されてこなかった膜のうねりが蛋白質により大きく減少する事、脂質の組成の変化により蛋白質の水との接触しやすさなどの環境が変化する事を見いだした。今後はより生物学的に重要な蛋白質を利用した系での大規模なシミュレーションを行っていく予定である。また、最終年度でのシミュレーションに向けて、構造変化を考慮したBrowllian Dynamics法の開発を行ってきた。Hergチャネルに対して予備的な計算を行い、良好な結果を得ることが出来た。
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