研究概要 |
前年度までに男性ホルモンであるテストステロンによりI_<Ks>、チャネルが活性化され、I_<Ca, L>チャネルが抑制されることを明らかにしているので、本年度は女性ホルモンであるプロゲステロン、エストラジオールの検討を行った。これら女性ホルモンでも同様にI_<Ks>チャネルが活性化され、I_<Ca, L>チャネルが抑制されること、これらが性ホルモン受容体→c-Src→PI3-kinase→Akt→eNOSにより活性化されるNOによる作用であることが明らかとなった。続いてこの性ホルモンの非ゲノム作用に関わるイオントランスポートソームの解明に着手した。スクロース密度勾配遠心分画法を用いた検討から、KCNQ1、CACNA1C、eNOSがカベオラ分画に局在すること、KCNE1、c-Src、p85,Aktは比較広範な分布を示すがかなりの部分がやはりカベオラ分画に局在することが明らかとなった。性ホルモン受容体は、N末端の抗体では認識されずC末端抗体でのみ認識されるN末端欠損型がカベオラ分画に局在し、これらが性ホルモン非ゲノム作用を担当する性ホルモン受容体と考えられた。 また、I_<Ks>チャネル活性化はグアニル酸シクラーゼ阻害剤では抑制されず、cGMP非依存性のニトロソ化作用によることが示唆された。そこで、ビオチンスイッチアッセイを用いてKCNQ1チャネルがニトロソ化されるか否か検討したところ、KCNQ1のCys残基の一つだけがニトロソ化され、それには周辺アミノ酸がレドックス環境にあること、これに加えて他のタンパク質との相互作用が必須であることが判明した。 以上から、NOによるイオントランスポートソームの実体が明らかになりつつあり、今後はこれらの分子のカベオラ局在の分子メカニズム解明、および生細胞でのこれらの動態のイメージングを目指していく。
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