偽性低アルドステロン症II型(PHAII)の病態解明を通して、腎臓でのNaCl再吸収やK分泌に関わる輸送体が、PHAIIの原因遺伝子であるWNKキナーゼと蛋白複合体を形成し、生理的に制御されるしくみが存在することを明らかにした。 具体的には、ヒトPHAII患者と同じ変異を持つ遺伝子改変マウス(ノックインマウス)を作成し、生体内での真のPHAIIの病態解明を試みた。その結果、変異WNK4はSTE20-like kinaseであるOSR1/SPAKキナーゼをリン酸化し、OSR1/SPAKキナーゼはさらにサイアザイド感受性Na-Cl共輸送体(NCC)をリン酸化し、リン酸化されたNCCは細胞膜上に存在して盛んにNaClを再吸収し、塩分依存性高血圧症が形成されると考えられた。また、NCC以外の輸送体、ROMKカリウムチャネルやENaC上皮型ナトリウムチャネルは変異WNK4によって一次的に制御は受けず、WNK4の直接のターゲット分子ではないことが示された。 さらに、このリン酸化カスケードは、野生型のマウスに塩分摂取量を変化させたときにも、低塩で活性化し、高塩で抑制され、生理的条件下でも働いている系であることが示された。一方、この生理的な制御がWNK4ノックインマウスでは喪失しており、高塩食時にもNaCl再吸収が低下しないことがPHAIIでの高血圧発症に寄与していることが明らかになった。さらに、この食餌性の制御はアルドステロン阻害剤や外因性のアルドステロン投与により影響を受けることから、WNK4-OSR1/SPAK-NCC系はあらたなアルドステロンのeffecterとして腎臓内で体液容量調節に重要な働きをしていることも明らかとなった。
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